[2009.12.16] -[議会報告]
12月11日、樫昭二県議が一般質問に立ちました。
主な内容は、1.知事の政治姿勢、2.県民のくらしを守るための雇用・福祉対策、3.教育問題、4.内海ダム再開発事業、5.農業問題について質問しました。
質問内容は以下の通りです。
一般質問を行います。まず初めに知事の政治姿勢についておたずねします。
1.知事の政治姿勢について
(1)県民生活の悪化に対する対応
年の瀬を迎え、今、国民のくらしはかつてない厳しい状況に追い込まれています。年収200万円以下の「働く貧困層」は1000万人を超えており、民主党政権になって初めて政府が公表した、貧困率は15.7%で、OECD(経済協力開発機構)の加盟30か国中、日本はメキシコ、トルコ、米国についで4番目に高い結果となっております。その中でも、ひとり親世帯の貧困率は58.7%で、30か国中最悪であります。さらに、生活保護世帯は114万世帯にものぼり、失業者は350万人となっています。経済不況のもと、本県では穴吹工務店の経営破たんにより、連鎖倒産の不安が広がり深刻な状況となっています。県信用保証協会のまとめによると、昨秋以降の急激な景気悪化により、今年上半期の代位弁済は27億8000万円で過去最大の昨年度を上回る可能性もあるといわれています。そこで知事におたずねしますが、県民生活の悪化というひどい状況を知事はどのように受け止めておられるのか。県政運営のトップとして知事の責任は重大であり、今後の対応も含め、知事の基本的な考えを明らかにしていただきたいと思います。
(2)鳩山民主党政権に対する対応
さて、臨時国会が終わりましたが、知事は民主党政権に今後どのように対応されようとしているのでしょか。
臨時国会で示された第1の点は、肝炎対策基本法、原爆症基金法が成立しましたように、国民が声を上げれば政治は変わるということを、第一歩ですが、示したことにあります。
第2点は、新政権の動きの中で、公約からの後退が次々に現れるという状況が生まれたことです。特に雇用問題をめぐっては、失業問題がこれほど深刻になっているのに、労働者派遣法改正について一言も言及せず、「そんな姿勢でいいのか」という日本共産党の指摘で「派遣法改正案を通常国会に提出する」と言明しました。しかし、失業保険の「全国延長給付」には消極的態度です。また、後期高齢者医療制度については、4年後の「新制度ができるまで廃止を先送りする」という態度でマスコミからも「廃止で共闘した共産が追求」「“変節”民主苦しい弁明」と批判される始末であります。さらに沖縄基地問題では、米国に一喝されたら平気で公約を覆す、これでは自公政権の対米従属外交とどこが違うのかという厳しい批判が内閣に集中しています。知事はこのような状況をどのように受け止め、またどのように対応しようとしておられるのでしょうか。特に来年度の予算編成に合わせ、民主党が小沢幹事長のもとで着手している陳情・要請の“仕分け”に地方や現場から「国民の要望をなぜ政府に直接届けられないのか」と強い批判が出ていますが、この点もあわせお答えください。
(3)来年度予算編成方針
なお、来年度の予算編成方針についてですが、知事は国に対し「地方に負担が転嫁されることがないよう」「地方交付税の充実」を全国知事会を通じ働きかけていくと表明しておられます。それも重要なことですが、私は税金の使い方をもっと県民の立場に立って見直すことがより重要でないかと思います。
1500億円という巨費を投じ、県財政の破綻の原因となったサンポート高松シンボルタワーの来場者は5年で半減、国の合同庁舎南館も建設凍結となるなど、将来構想の見直しが求められています。そして今、国の補助金も決まらないのに新内海ダム建設を見切り発車させようとしていますが、今求められているのは、大型開発よりも、県民のくらし、福祉、教育の充実こそが優先されなければならないということです。県民生活の悪化がひどい状況のもと、県民の立場に立って税金の使い方を抜本的に見直すことを強く求めるものでありますが、知事のご所見をお示しください。
2.県民のくらしを守るための雇用・福祉対策
次に、県民のくらしを守るための雇用、福祉対策について3点おたずねします。
(1)失業者支援、生活福祉資金貸付
第1は、失業者支援のためのワンストップサービスの実施と今年10月から拡充された生活福祉資金貸付実行の徹底についてであります。11月30日に、17都道府県のハローワーク77ヶ所で試験的に実施されました。国は「昨年末の派遣村のような状態にならない態勢」といっているが、先に試行された内容では、その場で解決まで結びついた例は少なく、改善点も指摘されています。ハローワーク、県、市、町並びに社会福祉協議会の連携で、生活福祉資金、臨時特例つなぎ資金制度などの周知徹底とその活用をはかる必要があります。文教厚生委員会での私の質問に、生活福祉資金貸付の原資は国から7億4200万円きているが、本県での貸付は10月末時点で、4500万円にすぎないことも明らかになっています。県として高松市のトキワ商店街に設置されている「香川求職者総合支援センター」で失業者支援のためのワンストップサービスを恒常的に実施すべきです。また、生活福祉資金貸付については、生業費として個人事業者に対する貸付支援も行うようになっており、労働者だけでなく、個人事業者に対する制度内容の周知と貸付実行を徹底して行なうべきと考えますが、お答えください。
(2)高い国保料の引き下げと減免制度の拡充
第2は、高い国保料の引き下げと減免制度の拡充についてであります。前自民党政権は、1984年の国民健康保険法改悪を皮切りに、国保への国庫負担を削減し続け、国保を深刻な財政難に陥らせました。年金生活者、失業者など「無職者」が加入の過半数を占める国保は、もともと手厚い国庫負担なしには成り立たない医療保険です。国保を安心できる医療制度とするためには、国保料をだれでもが払える水準に引き下げ、国庫負担を元に戻すことが必要です。県として、国に対してこのことを強く要望すべきと考えますが、お答えください。
また、減免制度の周知と拡充が求められています。法定減額は、低所得者に対し、収入に応じて市・町が行いますが、確定申告していなかった場合には、この法定減額が受けられません。これに対する県民への周知を行うべきです。申請減免は市・町によって適正基準がことなりますが、災害・病気・失業などの場合は受けられます。5月29日付の厚労省通達では、失業によって健保から国保に移った人に対し、市町が減免措置した場合、国が財政支援することになっています。このような減免制度を県の広報などでわかりやすく周知すべきと思いますがお答えください。
政権についた民主党はマニュフェストで、国保への財政支援を強化し、地域間の格差をなくすことを公約しています。それを実現させるとともに、県としても市町の国保に財政支援し、高い国保料の引き下げと、減免制度の拡充を行うべきと考えますがお答えください。
(3)保険料滞納者に対する資格証明書発行の中止
第3は、国保における保険料滞納者に対する資格証明書の発行をやめさせることです。厚労省は、新型インフルエンザの流行が拡大する中、危機管理の立場から9月25日付で国保料滞納者へのインフルエンザ対策について、各都道府県に通知を出しました。この通知により、国保料の滞納で資格証明書を発行されていた、県下で3262世帯の人が、短期保険証を受け取ることができるようになりました。これと合わせ、厚労省の通知では、資格証明書の交付時点で「特別な事情」の把握に努めていれば、もともと資格証明書の交付対象でなかった可能性もあるとして、再点検を求めています。文教厚生委員会の私の質問で、再点検の結果、3262世帯から2848世帯と400世帯余り減少してますが、本当に生活が困窮し、払いたくても払えない人と、支払い能力があるのに払わない悪質滞納者とを区別し、悪質滞納者以外すべて資格証明書の発行をやめるよう市町に指導すべきと思いますが、お答えください。
3.教育問題
次に、教育問題について2点おたずねします。
(1)高校教育費の無償化
第1は、高校教育費の無償化についてであります。経済不況や雇用情勢の悪化によって、高校生が卒業を前にして、授業料が払えず卒業できない、あるいは中途退学するという深刻な事態が起きています。高校教育の無償化は世界の流れであり、当たり前のことです。経済的理由により、高校に行けないことがあってはなりません。政府は、国際人権規約の学費無償化条項の留保を撤回し、高校での無償化を実施に移すべきです。
民主党政権のもと、文科省は概算要求で、来年4月より高校教育の実質無償化を打ち出しました。公立高校は生徒一人に年額11万8800円助成、私立高校も同額とするが、年収500万円未満の世帯には倍額の23万7600円を高校の設置者に助成金として支給するとしています。さらに年収350万円以下の世帯の生徒約45万人を対象に、入学料と教科書代にかかる分を返済不要の給付型奨学金制度を創設するとしています。しかし、教材費や修学旅行費はそれに含まれておらず、現在これを払えない生徒が学校を辞めていく事態も起きております。学校の教師からは、低所得世帯のほとんどは、すでに授業料の減免措置を受けており、授業料が無償化されても恩恵を受けられない生徒が多いとの指摘もなされています。国の高等学校等修学支援金によって、今年度、県が実施してきた授業料の減免補助に要した予算額2億1000万円の一定額が不要になるのですから、その不要額を教材費、修学旅行費、通学費などの補助金にあて、県独自の補助制度を創設するべきではないでしょうか、知事のお考えをお示しください。
(2)学校の統廃合中止と少人数学級の実施
第2は、小中学校の統廃合をやめ、少人数学級を実施することについてであります。
私は、今、本当に経済危機というこの時期だからこそ、未来への投資として、教育予算の抜本的増額という方向に政策を転換すべきと考えます。10年前の教育予算は999億円でしたが、今年度は859億円(-14%)であります。少子化の影響もありますが、何よりも正規採用の教員が大きく減少し、替わりに、常勤講師が増えている。ここに原因があると思います。全国の流れは、少人数の30人以下学級ですが、本県の場合は、小学校の低学年は、正規教員と非正規の講師の先生がペアで複数担任制を実施、小学校の基本3教科、中学校の基本5教科で、少人数指導を行う、いわゆる香川型指導体制をとっているが、少人数学級は一部の学校で試行されているにすぎず、他県と比べ、教育にお金をかけない安上がりの教育を行っているといわざるを得ません。全国学力学習状況調査では、全国平均をやや上回るという結果は出ているものの、学校内で発生した暴力は全国ワースト3位となっており、授業が分からない子ども、平成16年度と比較して、小学校の場合、4・1%から、平成20年度は4・3%と増加、中学校の場合、9・2%から7・8%と減少しているが、小学校と比べてはるかに高い率となっています。さらに不登校は小学校0・26%から0・27%に、中学校2・89%から2・94%に増加するというひどい結果です。もう香川型指導体制は限界にきているのではないでしょうか。教育長の基本的なお考えをお示しください。
なお、本県では、市町合併や少子化に伴い、学校の統廃合がすすめられており、今後もさらに高松市、坂出市、さぬき市、東かがわ市、土庄町、まんのう町で統廃合が計画され、小学校で30校減、中学校で6校減が見込まれています。
私は、学校は小さいほど良い教育ができると思います。学校が小さければ、クラスも小さくなり、一人ひとりに行き届いた教育、学習生活指導もでき、人間性も豊かに育まれる条件となります。さらに、学校が小さければ、校区も小さいわけで、互いに顔見知りになり、子どもを中心に人のネットワークが形成され、校区の教育力が高まります。今問題になっている、いじめや暴力、不登校などを解決する力になると思います。国連の機関であるWTOは、望ましい学校規模として100人以下を勧告しています。
ところが県教委は、国に先駆けて、学校統廃合の指針、1学年2学級以上、小学校12学級以上、中学校9学級以上と定めています。文教厚生委員会の私の質問では、それは市町が統廃合を検討する際の参考であると答弁されましたが、現場では、指針が基準とされ、強引な統廃合がすすめられています。このような指針は廃止し、学校の統廃合はやめ、教育予算を大幅に増額し、正規教員を増員し、今こそ少人数学級を推進すべきと考えますが、教育長の決意をお伺いします。
4.内海ダム再開発事業
次に、内海ダム再開発事業についておたずねします。このことについては9月議会において、わが党の白川議員が、ダム本体工事の入札を急ぐのではなく、まずは計画を白紙に戻し、全県民的な議論が必要ではないかとただしましたが、その後知事は入札を強行し、業者を決定、そして今議会にその承認を求める議案を提出するに至っています。そこで以下3点についておたずねします。
第1は、なぜそんなに急ぐ必要があるのかということです。来年度の国の補助金がどうなるか、全く不透明な状況の中で、52億8500万円もの本体工事を着工させようとすることは、全く無謀な行為だと思います。県の収用委員会の審理や、反対住民による事業認定取り消し訴訟もまだ始まったばかりであり、「訴状」に対する反論の理由を明らかにする「準備書面」さえ提出できていない状況です。そのうえ、11月には、水没予定の「落合池」の水利権者ら5人から、国と小豆島町を相手取り、05年に内海町、06年に国に移った池の所有権登記の抹消を求める訴訟まで起こされています。知事はこのような状況をどのように受け止めておられるのでしょうか。私は、国の動向、収用委員会の審理、そして裁判の推移などを見極め慎重に対処すべきと考えますが、ご所見をお示しください。
第2は、この問題で何よりも大切なのは、透明性のある議論です。ダムを推進する側の県と小豆島町、そして建設反対の住民側との間で、大きな争点になっているのが 治水と利水の問題です。
治水の点では、昭和51年災害の被害状況について、町は68人が死亡したと主張しているが、それは本当に別当川の氾濫で亡くなったのか。反対住民の側は、別当川本流での人災、住居の倒壊等はなく、洪水の発生原因は隣接河川や別当川の支川である西城川、片城川からの氾濫であったといっているがどうなのか。この点について明確にすべきと思います。ご答弁ください。
そしてもう1つ、利水の点ですが、町は「新しい水源の確保は緊急の課題である」と訴えているが、反対住民の側は、平成9年に吉田ダムが完成し、小豆島のダム総貯水量は161万トンから397万トンへ約2.5倍に増えており、現在の水使用量は横ばいの状態であり、人口減少で水需要は減少すると予測され、水源確保の必要性はないのではないかといっています。この点も明確にする必要があります。県として、重要な争点である治水と利水について、関係住民並びに県民が納得できる透明性のある答弁を求めるものであります。
第3は、景観の問題です。寒霞渓は、群馬県の妙義山、大分県の耶馬渓とともに、「日本三大渓谷美」の一つであり、小豆島で最大の観光名所であります。10月30日のNHK「四国羅針盤」で、寒霞渓の展望台で、ダム建設に賛成か反対かのシール投票が行われている様子が放映され、賛成ゼロ、反対多数の結果が出されていましたが、景観を台無しにすれば、小豆島の観光事業は取り返しのつかない打撃を受けるのではないでしょうか。
宮崎駿監督のアニメ「崖の上のポニョ」の舞台として有名な鞆の浦の開発計画に対する差し止め訴訟で、広島地裁は「鞆の浦の景観は美しいだけでなく、歴史的、文化的価値を有するものであり、景観利益は保護に値する」「国民の財産ともいえる公益である」と工事の着工を差し止める判決を下しました。寒霞渓は、鞆の浦に勝るとも劣らない、まさに判決にいう「国民的財産」ではないでしょうか。この判決に対する所見と合わせ、小豆島の観光事業に与える影響について、お答えください。
5.農業問題
最後に農業問題についておたずねします。
(1)農家への支援策
農業経営が厳しさを増すなか、後継者不足も深刻になっています。そうしたなかで、「さぬきの夢」に代わるうどん用県産小麦の後継として「香育21号」が決まるという明るいニュースや県農業大学校における新規就農希望者に対する就農研修の定員を20人から60人に3倍に拡大するなど、県の農業振興策への期待が高まっています。JA香川県は、平成22年度から24年度の3年間で、農家所得を5%増大させる。自給率は40%にするという方針を打ち出すとしていますが、県は農家に対しどういう支援策を打ち出そうとしているのか、具体的にお示しいただきたいと思います。
(2)価格保障・所得補償対策と日米FTA・日豪EPAに対する見解
先日、NHK教育テレビの「日曜フォーラム」で『農業で食べていけるか』をテーマに農家や消費者の代表らによる討論がなされました。この番組の結論的なところは、現在のままでは農業だけで食べていける所得を得ることは無理ではないか。スイスでは農家所得に占める国の直接払いは94・5%、フランス90・2%とヨーロッパでは、これが当たり前になっているが、日本では15・6%にすぎない。農業の多面的役割、環境保全、国土保全といったものを評価し、農業への直接払いを積極的にやるべきではないかというものでした。本当に重要な指摘だと思います。私は、再生産が可能な農家収入を保障する価格保障・所得補償と関税など国境措置の維持・強化を一体ですすめる必要があると思います。また、歯止めない輸入自由化路線を転換することが重要です。ミニマムアクセス米の「義務付」輸入をやめ、日本農業に甚大な打撃を与える日米FTA(自由貿易協定)、日豪EPA(経済連携協定)に反対し、各国の食料主権を保障する貿易ルールの確立を図ることが急務だと思いますが、知事のご所見をお伺いして、私の質問を終わります。