[2016.7.5] -[議会報告]
7月1日、一般質問にかし議員が立ちました。
質問の内容は以下の通りです。
今、第24回参議院選挙が戦われています。安保法制=戦争法成立を強行し、さらに明文改憲へ執念を燃やす安倍政権の危険な動きと、それに対する国民・市民・野党の共闘・共同がかつてなく広がる中での歴史的選挙です。
安倍首相や自公、おおさか維新などは野党共闘を「野合」などと非難しますが道理は全くありません。「立憲主義回復」は、憲法を守るまっとうな政治を取り戻し、政治の土台を再建する緊急課題です。政策の違いを横においても最優先にすべき大義があります。国民・市民の期待に応えた野党共闘は、戦争法廃止・立憲主義回復のほか、暮らしを守るための「共通政策」も豊かに発展させています。国民の声に真っ向から反し、立憲主義という政治の基盤を破壊する安倍首相らに野党共闘を攻撃する資格はありません。以上申し述べまして質問に入ります。
まず初めに知事の政治姿勢について2点おたずねします。
第1は、安倍政権の憲法改定についてです。
参院選第1声で、安倍首相は、もっぱら最大のテーマは経済だと「アベノミクス」の自慢話に終始しました。2013年の参院選、2015年の衆院選の時も、経済が争点だといいながら選挙が終れば秘密保護法や戦争法を強行するというやり方を今度も許す訳には参りません。
安倍首相は、公示直前の党首討論などで次の国会から衆参両院の憲法審査会で議論し、改憲案をまとめると言い出し、憲法問題が戦争法や経済問題とともに大争点に浮上しました。ところが首相は、まだ改憲の中身がまとまっていないから参院選では争点にならないと第1声でも触れませんでした。
もともと安倍首相は集団的自衛権行使についての憲法解釈を一方的に変え、さらに憲法そのものを変えてしまう明文改憲の策動を繰り返し口にしてきました。ところが参院選が近づいた途端、改憲は目指すがその中身は語らないと言い出したのです。参院選で改憲の中身を語らないのは、国民の抵抗を恐れ、国民をだまして多数の議席を獲得し改憲を進める悪辣なたくらみです。
安倍首相が語らなくても、自民党の改憲案の危険性は明らかです。自民党が安倍政権の発足に先立ってまとめた改憲案には、憲法9条を変え、集団的自衛権の行使に一切の制限を取り払い自衛隊は「国防軍」として「戦争する国づくり」を進めること。基本的人権は「侵すことのできない永久の権利」だという現憲法の規定を廃止し、「公共及び公の秩序」によって制限できるようにするなど、憲法を憲法と呼べないものに変えてしまう重大な内容が盛り込まれています。
安倍首相は改憲の中身は語らないといいながら、わが党の志位委員長が党首討論で「9条には手をつけないと言えるのか」と迫っても確約しませんでした。安倍首相が狙う改憲の危険性は明白です。
そこで知事におたずねします。
第1は、憲法第99条には「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」と定められていますが、この条文について知事の基本的なお考えをお示し下さい。
第2は、自由民主党の「日本国憲法改正草案」をお読みになられましたか。読まれているのであれば、ご所見をお示し下さい。
第3は、憲法前文の「憲法改正禁止規範」についてです。
日本国憲法前文は、政府の行為によって再び戦争の惨禍を繰り返さない決意とともに、人権尊重と民主主義の理念を高らかにうたい、これを「人類普遍の原理」と明記し、さらに「この憲法は、かかる原理に基づくものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する」とうたわれています。これは、仮に憲法改正の手続きを経たとしても、根本理念を否定する「改正」は無効だとする宣言です。これが「憲法改正禁止規範」と呼ばれます。
私は、これにてらしてみるならば自民党の改憲草案は、9条2項の削除をはじめ先駆的な平和原則を否定するなど、日本国憲法の根本理念を含む全面改悪であり「排除」されるべき憲法草案だと思いますが知事のご所見をお示し下さい。
第2点目は、アベノミクスによる格差と貧困の是正についてです。
イギリスの欧州連合(EU)離脱をきっかけに、日本での株価大暴落、円高急伸を受けて、アベノミクスの2つの破綻が明らかになりました。第1の破綻は、大企業が空前の利益を上げながら、家計には恩恵がなく、「トリクルダウン」が破綻。実質賃金が5年連続マイナスとなり、年収400万円世帯では20万円も目減りし、1990年以降で最悪となったこと。さらに戦後初めて国内総生産(GDP)の6割を占める個人消費が2年連続マイナスとなるなど、まさにアベノミクス不況というのが今の実態です。
第2の破綻は、アベノミクスがつくり出したのは、強い経済ではなく、きわめて脆い経済だということです。イギリスのEU離脱が世界に衝撃を与え、日本で起きている急激な円高や株価の大暴落について、「なぜ日本経済にこんなに大打撃が起きるのか」との声が高まっていますが、それがアベノミクスの結果なのです。アベノミクスは、異次元金融緩和で円安をつくり、海外から投機マネーを呼びこんで、株価をつり上げる、投機マネー頼みの円安・株高政策です。これが、投機マネーの動きに極めて弱い経済をつくり出したのです。
このような破綻したアベノミクスをさらに続けさせるなら国民の暮らしはますます大変です。今、求められているのは、アベノミクスからの根本的な転換です。私は、アベノミクスはもうやめて、格差をただし、経済民主主義を確立する「3つのチェンジ」を提案したいと思います。
第1は、「税金の集め方のチェンジ」です。消費税10%は先送りではなく、きっぱり中止する。そして富裕層と大企業に応分の負担を求める「消費税に頼らない別の道」で財源をつくること。
第2は、「税金の使い方のチェンジ」です。大事な税金は、社会保障、若者、そして子育てに優先して使う。認可保育所の増設や保育士の待遇改善で「保育園に落ちない日本」にする。そして大学の学費を10年間で半減し、給付制奨学金を創設することです。
第3は、「働き方のチェンジ」です。ブラックな働き方をなくし、残業時間を法律で規制し「過労死」をなくしていく。そして非正規から正社員の流れをつくるための雇用のルールの強化をはかる。最低賃金は、中小企業の手当をしっかりしながら、今すぐどこでも時給1,000円そして1,500円をめざす。大幅な引上げをはかることです。
以上、私は国民のくらしをあたためる経済政策にチェンジすれば、国民の所得が増えて景気が回復し、税収も増えて財政危機を打開する道が開けると思いますが知事のご所見をお示し下さい。
次に、伊方原発の再稼働についておたずねします。
この夏の電力需要でも原発がなくても対応が可能なことは、四国電力の発表でも明らかです。それにもかかわらず、報道によると四国電力は、伊方原発3号機について、7月26日に原子炉を起動し、作業が順調に進めば7月29日に発電と送電を開始するとしています。そして、すでに「伊方原発の安全対策」のパンフレットを各家庭に配布しています。
1995年の阪神・淡路大震災、2004年の新潟県中越地震、2011年の東日本大震災に続き、約20年間で4回目になる震度7を記録した熊本地震が4月14日に発生、2カ月余の間に、震度7が2回、震度6が5回、震度1以上の地震が1,700回を超えるという中で、今も多くの被災者が厳しい状況に置かれています。
この間、阿蘇地方、大分県中部でも大きな地震が発生していますが、専門家の間でも、活断層の動きが誘発される可能性は高いが、予測は困難と指摘する声もあります。奈良県の金剛山地から続き、四国を横断し、伊方原発沖約8kmをとおる中央構造線活断層に、九州側の別府-万年山(はねやま)断層帯を含め、加藤照之前日本地震学会会長は、「地震をおこした断層の延長線上で地震活動が高まる可能性がある」としています。
6月10日、政府の地震調査委員会は2016年版「全国地震動予測地図」を公表し、南海トラフ地震の発生が近づいているとし発生確率が上昇しています。
伊方原発の基準地震動は最大650ガルとされていますが、熊本地震では1,580ガルが記録されています。
そこで知事におたずねします。
第1は、熊本地震の被害や発生メカニズムを調査分析し、南海トラフ地震を想定した上での安全対策を講じること。第2は、熊本地震をふまえ基準地震動の評価について再検討すること。第3は、県民の不安が払しょくされるまでは、3号機を再稼働させないこと。
以上3点について、原子力規制委員会と四国電力に申し入れるべきと考えますが、知事のご所見をお示し下さい。
次に、TPPについておたずねします。
安倍政権は、先の通常国会でTPP批准と関連法案の成立をめざしてきましたが国会審議と国民の闘いの広がりのもとで断念せざるをえなくなりました。
国会論戦で明らかになった問題点の第1点は、異常な秘密主義です。交渉の入り口から出口まで徹底した秘密交渉が貫かれ、日本の参加条件とされた日米2国間の並行協議でも、何が話し合われ、日本が何をどう受け入れたかもわかりません。国会に提出されたのは「黒塗り文書」、その一方で、西川・TPP特別委員会委員長の「内幕本」の存在が明らかになり紛糾。国会には秘密にしておきながら、政府・与党関係者からは内幕本が出される―これ程国民をバカにした話はありません。甘利前大臣のもとで秘密裏にすすめてきた合意内容を、すべて明らかにすべきです。
第2点は、明確な国会決議違反です。2013年の国会決議は、コメ、麦、牛肉など農産物の重要5項目は関税撤廃を認めない、除外または再協議するとしています。自民党は、この決議を守ることを国政選挙の公約にしたはずです。ところが、今回のTPPでは、安倍首相自身も聖域とした重要5項目の内、3割の品目で関税が撤廃され、コメでも、関税ゼロの特別輸入枠まで新設されました。わずかに残った関税も、発効7年後には、撤廃に向けた協議を約束させられました。これは明白な国会決議違反、公約違反ではありませんか。
第3点は、経済主権を多国籍企業に売り渡すものです。米国を代表する108の多国籍企業、業界団体が名を連ねたTPPのための米国企業連合は、米政府に要求書を出し、専ら多国籍企業の利益拡大の立場から日本に市場開放を求めてきました。これこそTPPの真実ではありませんか。
第4点は、史上最悪の農業つぶしだということです。農業の関税撤廃をめぐって、安倍政権は156のタリフライン(関税区分の細目)の関税を維持したと言っていますが、段階的関税削減を含めて82%の撤廃は、日豪EPA、経済連携協定やウルグアイ・ラウンド農業合意をはるかに上回るもので史上最悪の農業つぶしにほかなりません。
第5点は、進出する多国籍企業の利益を保証する非関税措置の撤廃で国民生活が脅かされることです。あらゆるサービスが規制緩和の対象となり、企業や投資家が損害を受けたとすれば、ISDS条項を用いて相手国を訴えられる仕組みまで盛り込んでいます。食の安全、医療、労働条件の悪化に加え、政府や自治体が発注する建設業などでは、国際入札の義務により地産地消のとりくみができなくなり地域の仕事が奪われることになりかねません。まさに幅広い分野で国民生活と営業が脅かされることは明白です。
以上5つの問題点について知事はどのように受け止めておられるのかおたずねします。
また、TPPの経済効果について、安倍内閣は、貿易や投資拡大でGDPを14兆円押し上げる一方、農業への影響は牛肉、乳製品等33品目が1,300億円から2,100億円減少するだけだときわめて過少に評価しています。特に問題なのは輸入米を増やしながら、コメの影響はゼロだとしていることです。本県でも国の算出方法に習い、生産減少額は約8億円~約15億円とし、コメの影響はゼロとしています。しかしながら、青森県では23億円、福井県は15億2,000万円、熊本県は13億6,000万円がコメの生産減少額として算出しています。日本農業新聞のモニター調査では76.7%の人が、政府試算は過少評価だと批判しています。熊本県の蒲島知事は、TPPは「日本の農業にとって国難に近い」とさえ言っていますが、浜田知事はどう思われますか。私は、TPPの影響額について、県独自の試算を行い生産農家に示すべきと考えますがご所見をお示しください。
次に国保の都道府県化についておたずねします。
2018年度より、国保の都道府県化という国保制度の大きな転換を迎えます。国保の賦課、徴収、給付や健診などの実務は従来通り市町ですが、都道府県が財政を担うことにより大きな権限を持つようになります。
今年4月28日に、厚労省より「都道府県国民健康保険運営方針策定要領」、いわゆる「ガイドライン」が示されました。これには、2017年度中に「国保運営方針」を市町と協議の上で策定するなどのスケジュールや、保険料率決定のための考え、手順などが記されています。ガイドラインは「技術的助言」であり、法的な義務・強制力があるものではありませんが、運営の基本姿勢について以下5点お伺いします。
第1は、ガイドラインは、国保の加入者は、無職または低所得者が多いことから、保険料負担が極めて重いという「国保の構造的問題」について一言も言及していません。この中心的を避けたガイドラインは極めて不十分であり、国に対して是正を求めるべきと思いますがお答え下さい。
第2は、ガイドラインの「財政収支の改善に係る基本的な考え方」では「決算補填等を目的とした」ものは、法定外の一般会計繰り入れについて「解消又は削減すべき対象」と述べています。しかし、政府の国保への財政措置は、今後の分も含めても3,400億円で、全国の法定外繰入3,900億円(2013年度)より少なく、地方自治体の国保会計への法定外繰入を止めれば、国保料は安くなるどころか、今より高くなってしまいます。国が財政措置を強化したのに、従前の繰り入れを削減し、国保加入者の負担が増加するような対応はすべきではないと思いますがお答え下さい。
第3は、ガイドラインが「統一保険料率」にも踏み込んでいることです。去る2月2日に開催された厚労省の「市町村職員を対象とするセミナー」では、報告に立った国保課課長補佐は「医療費格差が大きい場合は、原則として医療費水準に応じた保険料率とならざるを得ないと思っている。ただし将来的には地域の実情を踏まえつつ、都道府県で一本化した保険料率をめざすことになる」と述べています。本県では、都市部と農村や島しょ部では、1人当りの医療給付の実績は異なっており、市町間では大きな乖離があります。保険料率を一本化することは、県内の実態に合っておらず、国に対しては、強制することはあってはならないことを強く求めるべきと思いますがお答え下さい。
第4は、国保の広域化の真の目的は、医療介護総合確保法により、都道府県に医療供給体制の「適正化」を求めた「地域医療構想」と一体で、医療費抑制を進めることにあります。国保財政に措置させる次の1,700億円のうち保険者努力支援制度の700から800億円は、医療費削減に「努力」した自治体に優先配分される中身となっていることからも明らかです。これまでも、私ども議員団は、高すぎる国保料が払えず、病院に行けないという医療から排除された県民の実態も取り上げてきましたが、国保の運営方針の策定にあたっても、県として、医療から排除される人をつくらない、このことを大きな運営方針の基本として据えるべきと思いますがお答え下さい。
第5は、運営方針にかかわって、地方単独事業波及分、いわゆる窓口負担の軽減に対するペナルティ分の扱いについておたずねします。これまで国保の定率国庫負担金の減額分はすべて市町が負担してきました。現在、子どもの医療費のペナルティ部分については政府も議論していますが、国が試算した2013年度の県全体のペナルティ分は約4.5億円で、うち子どもの医療費が0.8億円と昨年の9月議会文教厚生委員会で答弁されており、子どもの医療費助成分のペナルティがなくなっても、依然大きな国庫負担金の減額が存在します。この減額分はどう対応するおつもりか、県も応分の負担をすべきと思いますがお答え下さい。
最後に、後期高齢者医療制度についておたずねします。
後期高齢者医療制度は、2006年の法改正から10年、2008年の制度から8年がたちました。この制度は、病気になりがちで、医療費がかかることが避けられない75才以上の人を1つの制度にまとめ、高齢者人口が増えるたびに加入高齢者の負担割合を増加させる仕組みとなっています。財政は、保険料、公費と現役世代からの「支援金」を入れて運営されていますが、収入が少ない一方で医療費がかさむ後期高齢者の独立した保険制度であるということ自体が、基盤の極めて脆弱なものとなっています。
法律では、目的として「医療費の適正化」すなわち医療費の削減を掲げ、医療内容の差別化にも通じる規定が盛り込まれており「姥捨て山制度」と強く批判をされてきたところです。
2008年の制度スタート時に、厚労省の幹部が「医療費が際限なく上がっていく痛みを、後期高齢者が自分の感覚で感じ取っていただくことにした」と言い、さらに2013年12月には「これからは高齢者にどんどん負担を求める時代だ。先の短い高齢者に基金を取り崩して保険料を下げるような優遇はすべきではない」などと述べてきました。
そして、いま安倍政権は、後期高齢者被保険者の負担軽減のための保険料「特例軽減」制度を廃止しようとしており、参議院選挙が終れば「保険料が2倍から最高10倍にも跳ね上がる人が出る大改悪」という大変な事態に直面しています。「特例」部分がなくなると、保険料は「8.5割軽減」の場合2倍に、「9割軽減の場合」3倍、「被用者保険の被扶養者だった9割軽減」の人は3倍から10倍の値上げになります。
そこでおたずねしますが、厚生労働省の後期高齢被保険者実態調査によりますと、特例軽減の対象者は全国で752万人、被保険者の47%を占めていますが、本県ではどのぐらいの対象者がいるのか。さらに保険料がどのぐらい上がるのかお示し下さい。
また、本県では保険料の滞納者は1,841人でその内、短期保険証交付者が218人となっていますが、こうした人が増えることになり、医療から排除されることになりはしないかと危惧するものでありますが、この点についてもお答え下さい。
後期高齢者の年金収入の現状は、平均が127万円で、基礎年金満額の80万円以下が約4割を占めています。この層の人は、他に所得がないのが圧倒的で、さらにその半数近くは50万円以下、月額5万円に満たない年金で暮らしています。こんなギリギリの生活を強いられている人を含め、低年金の高齢者に負担増を押しつけることは許されません。私は、県として国に対し「特例軽減」の存続を強く求めるべきと考えますが知事のご所見をお示し下さい。