3月16日、白川議員が一般質問に立ちました。
質問と答弁は以下の通りです。
1.来年度予算案
2017年度香川県の当初予算案は、一般会計総額4613億円が提案されています。ため池防災対策等事業など喫緊の課題もありますが、総じて「県民の命や暮らし」に寄り添う予算案ではないことを残念に思っています。
この間知事は、椛川ダムなどのダム開発、空港連絡道路中間工区や高松港の整備といった大型公共事業を進め、更に来年度予算案は、空港連絡道路香南工区や新県立体育館、さらには高松空港の機能強化、四国新幹線の議論など大型事業に積極的な態度が前面に出たものとなっています。県民の命と暮らしを守る予算に切り替えることを求めて以下質問いたします。
1)椛川ダム
まず、椛川ダムについてです。
中でも県の河川総合開発事業椛川ダムは事業費の見直しで、ダム検証時の385億円から55億円増の440億円になる見通しであることが、県公共事業評価委員会の審議で認められています。
椛川ダムは県の財政難という理由も含め停滞していた事業であり、民主党政権時代のダム検証時の事業費の見直しにより、当初480億円の総事業費が385億円に縮小したにも関わらず、再び事業費が55億円膨れ上がることとなりました。なぜこのようなことになるのか、議会に対しても報告もなされていません。このように、いとも簡単に総事業費が膨れ上がることを知事はどう認識されているのでしょうか。また、県民に対してどう理解を求めていこうとしているのかお答えください。
(知事答弁)
白川議員の御質問にお答えいたします。
まず、平成29年度当初予算案についてであります。
椛川ダムにつきましては、平成8年度から国の補助事業により建設事業に着手し、平成11年度には、概略設計に基づき全体事業費480億円で、利水者である高松市と基本協定書を締結しております。
御指摘のように、その後、平成23年度のダム検証時には、それまでの詳細な調査・設計を基に、堤体コンクリートの数量減などから、全体事業費を385億円としておりました。
今回、平成33年度までの国の協議が必要となる全体事業費について、ダム検証以降の消費税増税や労務・資材単価の上昇に加え、安全性の向上を目的とした、国の新たな技術指針に基づく付替道路の地滑り対策、コンクリート骨材の安全対策などにより、見直す必要が生じ、公共事業評価委員会のご審議をいただいたものであり、この見直しは安全性の面などで、事業を進めるうえで必要やむを得ないものであると認識しております。
なお、現在、公共事業評価委員会の審議結果を県のホームページに掲載しておりますが、今後、より詳しい資料を掲載する予定です。
椛川ダムは、県民の皆様の安全・安心の確保のため、治水・利水両面から重要な事業であり、引き続き、議会をはじめ、県民の皆様の御理解をいただきながら、早期に事業効果が発揮できるよう進めてまいります。
2)空港連絡道路香南工区
更に来年度予算案では航空ネットワーク充実強化対策等事業約5億円をはじめ、8億円を超える高松空港振興対策事業が計上されています。また、「ビジット香川誘客重点促進事業」など「国際観光推進事業」に約6億3700万円が計上され、県民からは「海外からの誘客もいいけれど、いったいいくら税金を使っているのか?」というご批判も多くいただきます。高松空港へのアクセス確保のための空港連絡道路の整備も多額の費用を要しており、いくらインバウンドの拡大が続いているとはいえ、あまりにも偏った入れ込みようとなっているのではないでしょうか。
日本共産党議員団は、空港連絡道路の中間工区に限っては賛成をいたしました。それは空港連絡道路の整備が財政再建で中途半端にストップし、32号線との交差点で重大事故が続出し、県下一事故が多発する危険な交差点となってしまったからです。今でも道路の真ん中に非常にムダなスペースが置き去りにされ、集落が分断され、歩行者や自転車の横断にも大変危険を伴う状況は変わっていません。そもそも空港連絡道路の整備は財政再建でストップされているままであり、中間工区は32号線との大きな交差やコトデンとの交差もあり、特別の対策であったのではないかと認識しています。空港アクセスへのわずかな時間短縮のための香南工区の延伸よりも、まずは中間工区の安全確保と事故防止のための対策が最優先課題だと考えますが、知事の所見を問います。
(知事答弁)
空港連絡道路の整備につきましては、時間短縮効果や定時性などのアクセス向上とともに、国道193号など既存道路における市街地の交通が分散することによる交通の円滑化や、四国唯一の内陸空港である高松空港への災害時ネットワークの代替性・多重性の確保などの観点からも、必要な事業であります。
また、御指摘の中間工区の交通安全対策については、来年度の供用開始に向けて、安全かつ安心に通行できるよう、路面標示や標識の設置などについて、県警察とも連携を図りながら、積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
私といたしましては、財政規律の確保に意を用いつつ、地域経済をより活性化し、その成長を確実なものとするとともに、交通死亡事故の抑止など、本県の直面する課題に対応してまいりたいと考えております。
3)高松空港の運営の民間委託
次に高松空港の運営の民間委託についてです。私は、空港関連予算の拡大は、高松空港の運営の民間委託につながっているのではないかとの思いもあり、あえてここでお尋ねいたします。
経済委員会でもお尋ねいたしましたが、高松空港の運営の民間委託は、高松空港を管理している国が施設を保有したまま、運営権を新会社に譲り渡すという「コンセッション方式」と呼ばれるもので、今年8月に選ばれる運営事業者は地元自治体とともに新会社を設立します。新会社は空港とターミナルビル、駐車場などの運営をH30年度から始めることになっています。
空港は、人命を預かる公共的大量輸送機関の基地であり、第一義的に重要なのは安全性です。しかし、空港民営化のもとになっている「民活空港法」では「航空需要・旅客数・内外の交流人口の拡大等による地域活性化を実現する」ことが空港民営化の第一目的とされています。着陸料とターミナルビルの収益で滑走路の維持管理・運営をするなど、安全性が最優先されるべき空港でこうした運営方法が本当にふさわしいとお考えなのか、知事の所見を問います。
髙松空港のH27年度の年間着陸料等は約5億9200万円であり、来年度予算案では国際線の着陸料などの支援や利用促進等に要する経費として4億円を超える予算が上程されています。また、約2億3千万円の国直轄負担金も「国がすでに着手済みの工事や新規に整備するものについては従来どおり。」との委員会での答弁もありました。基本的に公共交通は儲かる分野の収益を儲からない分野に回して、ある程度の均衡を保つという考え方で成り立っているはずです。しかし、空港民営化となると、儲かるところは大企業が取り、行政は儲けにくい所を行政が抱えることになる。そのツケを払うのは県民・国民になるのではないでしょうか。空港という公共インフラのあり方の観点から知事は空港民営化をどうお考えかお尋ねいたします。
国管理の空港の民営化は仙台空港に続いて2例目ですが、全国初の事例となった仙台空港の運営は東急電鉄と前田建設工業、豊田通商が組む「東急前田豊通グループ」が選ばれました。その他仙台空港2次審査に残ったのは、三菱地所と大成建設、日本空港ビルデング、ANAHDのグループと、イオンモールと熊谷組のグループであり、結局、名乗りを上げるのは大企業と大手建設会社が組むグループばかりです。高松空港の民営化でも現在、国において第一次審査が終了し、第二次審査前の競争的対話という、国による審査の段階だと聞いています。今年8月には優先交渉権者の選定を国が発表し、10月には国との間で運営権設定・実施契約の締結となります。香川県の公共交通の要、香川の玄関口のあり方を問うとともに、大企業の経営論理に委ねるやり方で、最も大事な安全性が後景に追いやられる危険のある高松空港の民営化を県民の意見も聞きながら、慎重に国と運営権者との契約の判断を下すべきと考えますがいかがですか。知事の所見を問います。
(知事答弁)
高松空港の民間委託後の安全性につきましては、国が運営する場合と同じ安全基準を適用し、遵守状況を国が監視するなど、現行以上の水準が確保されるものと考えております。
今回の運営委託については、空港が地域の重要な公共インフラであることを踏まえ、民間からの利用者の利便性向上に関する提案内容が、選定にあたっての重要な評価項目となっており、民間の資金や経営能力を活用し、空港や地域の活性化を目指す仕組みとなっていることから、単なる利益追求ではないものと理解しております。
県といたしましても、地元経済界や市町から有効な手段であるとの御意見をいただいており、安全性が確保されるという大前提のうえに、サービスや利便性の向上、空港活性化につながる設備投資など、高松空港の運営委託により、県民の皆様が実感を持てる改善が図られるよう、引き続き、取り組んでまいります。
2.医療
(1)国民健康保険と後期高齢者医療保険
大きな質問の2点目は医療についてです。
まず、国民健康保険と後期高齢者医療保険についてお尋ねいたします。
厚生労働省は2月28日、昨年6月時点での国民健康保険料(税)滞納世帯数は、約312万世帯であることを公表しました。香川でも全国保世帯142,069世帯の13.7%、19,446世帯が滞納世帯となっています。
年間所得250万円の4人世帯に年間40万~50万円以上の国保料の支払いが求められるなど、国保料の高騰が全国各地の市区町村で大きな問題になっています。負担能力をはるかに超える保険料を払えず、やむなく「滞納」する世帯は少なくありません。生活が苦しく保険料を払えない世帯が、窓口で10割負担などできるはずもなく、「資格証明書」を交付された世帯の人が、経済的理由で病院にかかれず、治療遅れになって命を落とす悲劇が後を絶ちません。
国が自治体に保険料収納率の向上を競わせる中で、市町村国保の保険料・税収納率は6年連続アップの91.45%となり、対前年度比で0.50ポイント上昇しています。これは国保の収納率としては高い伸び率です。香川県でも27年度の収納率は92.48%と対前年度比で0.18ポイント上がっています。前年度より収納率向上の「先進」とされた他県のある自治体では、自動車修理業経営の老夫婦が自宅や年金を差し押さえられ、生活が成り立たなくなる悲惨なことまで起きています。香川県内でも、平成27年度の差し押さえ件数は、878件にのぼっています。
こうした背景には、厚労省による国保料徴収率が低ければ国から地方への交付金を最大2割減額するという「厚労省令」がありました。この「厚労省令」は廃止が表明されていますが、2018年度の国保の財政運営の都道府県移管に伴い、収納率上位の自治体に加算する「保険者努力支援制度」により市町村に徴収率を競わせ、更なる差し押さえへと追い立てられることは間違いありません。住民の暮らしの基盤を崩壊させる異常な取り立て、差し押さえをやめるべきと考えますが、知事の所見をお尋ねいたします。
また、国会で審議中の17年度予算案には、後期高齢者医療の低所得者に対する保険料の軽減措置を4月から段階的に縮減することが盛り込まれました。所得に応じて支払う所得割は現行の5割軽減から2割軽減へ縮小が実施されれば、いまでも全国で23万人以上が保険料を払えない状況を、ますます深刻化させます。「後期高齢者医療」でもきびしい取り立てが加速しかねません。香川県では来年度以降、この所得割の縮小による後期高齢者医療の保険料負担はどれだけ上がる可能性があるのか、保険料引き上げについての知事の見解も同時にお尋ねいたします。
(知事答弁)
次は、医療施策のうち、国民健康保険と後期高齢者医療制度についてであります。
国民健康保険においては、保険料の賦課にあたって、所得に応じた軽減措置を講じているほか、保険料を支払うことのできない特別の事情があれば、保険者の判断により、保険料の減免を行うなど、低所得者に対して配慮を行っております。
差押えなどの滞納処分は、個別の事情に配慮して行われるべきものであり、平成30年度の保険者努力支援制度の実施後においても、滞納があった場合には、まずは、短期被保険者証を発行することで、納付相談等の機会を設け、生活の実態を十分に把握するなど、きめ細かな対応が行われるよう、各市町に対し、必要な指導を行ってまいりたいと考えております。
後期高齢者医療制度については、現在、一定の所得の方は所得割が5割軽減されているところ、来年度は2割軽減となるため、最も影響がある方の年間保険料は、50,500円から、66,600円になります。
私といたしましては、後期高齢者医療制度の保険料軽減特例の廃止については、世代間の負担の公平性の確保を図り、制度の持続可能性を高めるために必要と考えております。
(2)国民健康保険都道府県単位化について
次に、国民健康保険都道府県単位化に向けた準備状況について伺います。2018年度から県と市町の共同運営という新制度に移行することが決まっており、来年度はこれに向けた最後の年度であります。
厚労省の調査によると、昨年夏の段階で、非公表ながら2都道府県が保険料水準の一本化を検討しているとのことでありました。同省が示したガイドラインでは「市町村ごとに設定することを基本としつつ、地域の実情に応じて、2次医療圏ごと、都道府県ごとに保険料率を一本化することも可能な仕組みとする」と明記されています。香川県では2018年度からの実施に向けて、保険料率の一本化も検討されているのかどうか知事にお尋ねします。
また、将来的には一本化をめざすよう求められており、今でも払いきれない保険料が更に払いきれない額になることが懸念されます。都道府県単位化への移行後は県が標準保険料率を設定するなど、市町の保険料賦課・徴収などに様々な形で介入することになります。埼玉県ではすでに標準保険料率の試算が公表され、一般会計からの繰り入れを考慮しない試算のため、保険料が現在の1.7倍になると試算された自治体もあります。県による標準保険料率の試算は保険料引き上げの圧力にもなりかねません。慎重に行うべきと考えますが、標準保険料率の試算とその公表について知事の所見をお尋ねします。
厚労省は都道府県化後も市町村の一般会計からの繰り入れは自治事務でもあり当然認めています。香川県内市町の一般会計からの繰り入れ額は、26年度で約27億5143万円であり、この繰り入れの継続は非常に重要です。一般会計からの繰り入れについては、市町の判断を尊重するよう求めますがいかがですか。知事に尋ねます。
また、国保の最大の問題は、住民が払えないような高い国保税です。県として繰入金を検討することや、国の負担割合を抜本的に引き上げるよう、国に要請することを求めます。知事のお考えをお示しください。
(知事答弁)
次に、国民健康保険の都道府県単位化についてであります。
まず、保険料率の一本化につきましては、本県においては、市町の医療費水準に格差があるほか、市町が実施する保健事業などにも差があるため、各市町と慎重に検討していく必要があると考えております。
標準保険料率の試算につきましては、現在、市町との間で、来年度に新制度が施行されたものと仮定して、市町への納付金の配分のあり方等を検討しているところであり、今後、本年夏ごろまでに見直される国のガイドラインの内容等を踏まえ、試算の公表内容や公表時期についても、議論を深めてまいります。
一般会計からの国民健康保険特別会計への繰入につきましては、県としては、決算補てん等を目的とする繰入は「解消又は削減すべき対象」と考えておりますが、保険料水準が急激に変化することのないよう、各市町とも十分に議論をしていきたいと考えております。
県におきましては、市町国保に対し、これまでも、財政調整交付金などの財政支援を行っており、県独自の繰入は検討していませんが、国と地方との間では、今回の改革後においても、医療保険制度間の公平に留意しつつ、安定的な運営が持続するよう、国保制度全般について検討し、所要の措置を講ずる旨の合意がなされていることから、引き続き、全国知事会等を通じて、今後の医療費の増嵩に耐えうる財政基盤の確立を図るよう、国に対して要望してまいります。
(3)子ども医療費助成拡大
県内の乳幼児医療費支給事業は直島町で高校卒業までを筆頭に、高松市の通院を除いたすべての市町で中学校卒業まで年齢が引き上げられ、給付方法もさぬき市と東かがわ市が今年8月からの現物給付を表明したので、全ての市町で現物給付となる予定です。窓口無料化についてはさぬき市と東かがわ市は就学後は大川圏域のみでの実施となるようですが、私が14年前、県議会議員として初めて質問をしたのも乳幼児医療費無料化の「年齢の引き上げと窓口無料化」でしたから、県と市町が力を合わせてようやくここまで来たと、隔世の感があります。
「香川県子どもの未来応援アンケート調査報告書」でも、「子育てに関する制度の利用経験」や「子育てに関する制度のうち、利用してよかったもの」という問いに対しての回答は、ダントツで「子ども医療費助成」が選択されています。子どもさんの学年や生活困難状況にかかわらず、利用して良かったと90%以上の方が答えていただける。本当にうれしい事ではありませんか。
市議会議長会や町村議会議長会からも繰り返し「要望」が出されています。県の制度として年齢を引き上げ土台がしっかりすれば、直島町のように年齢の引き上げを進める自治体が増える事でしょう。知事は直島町で乳幼児医療費支給事業の対象年齢を高校卒業まで引き上げたことについてどうお考えになっていますか。お答えください。
先日、徳島県議会でも、市町村が中学卒業かそれ以上の無料化に踏み切ったこともあり、県として中学卒業まで無料化年齢を引き上げることを知事が表明いたしました。香川県でも無料化の年齢の拡充、所得制限の撤廃など制度の充実を求めます。いかがですか。お答えください。
続いて、国保の国庫負担金減額調整(いわゆるペナルティ)についてお尋ねいたします。国は全国の自治体の声に押されて、平成30 年度から未就学児までを対象とする医療費助成制について、国保の国庫負担金減額調整を行わないこととする見直しの方針を出しました。未就学児までに限定されたことは甚だ遺憾ですが、香川県議会としても全会一致で「意見書」を提出した大きな成果でもあります。そこでお聞きいたしますが、これによって、市町のペナルティ額がどのくらい軽減されるかお答えください。
しかし、腹立たしいのは、厚労省からの通達に「なお、見直しにより生じた財源については、各自治体において、更なる医療費助成の拡大でなく他の少子化対策の拡充に充てることを求める」と書かれてあることです。そもそもこの減額調整は本来支払われて当然のものです。その使い道を国からとやかく言われる筋合いはありません。未就学児までしか対象としないことと共に、使い道を限定するような国の態度にキッパリと抗議の声を上げていく事が必要と考えますが、知事のお考えをお答えください。
(知事答弁)
次に、乳幼児医療費支給事業等についてであります。
県においては、子育て支援に資する施策として、独自に乳幼児医療費支給事業を設け、平成23年8月には、その対象年齢を就学前までに引き上げるなど、制度の拡充に努めてきたところであり、直島町をはじめ県内各市町においては、それぞれの判断により、市町の状況に応じて、独自に上乗せを行っているものと承知しております。
御提案の医療費の無料化に係る対象年齢の引上げや所得制限の撤廃につきましては、本県の子育て施策と医療施策全体の中で、県と各市町の財政負担の関係や施策の効果などにつきまして、様々な観点から検討した結果、現行の制度を継続したうえで、各市町が地域ごとのニーズに応じて創意工夫を凝らした事業を実施できるよう、平成26年度に本県独自の「かがわ健やか子ども基金事業」を創設して、各市町の取組みを支援しているところであります。
各市町が様々な施策を実施する中で、本来、市町の一般財源で行う新規事業に、この基金を活用していただくことにより、乳幼児医療費支給事業の対象年齢の引上げも含め、少子化対策や子育て支援施策の一層の幅広い展開が可能になるものと考えております。未就学児までを対象とする医療費助成に係る国保の国庫負担減額措置については、平成27年度の国庫負担実績から推計すれば、今般の見直しにより、県全体で約6千万円軽減される見込みであり、見直しによる財源の使途については、各市町において各々判断すべきものと考えております。
厚生労働省の通達において、「他の少子化対策の拡充に充てることを求めるものとする。」とされているのは、国における検討の中で、いわゆる長瀬効果による医療費の波及増により、医療費に係る国民負担が増大することを懸念したものではないかと思われますが、仮にそうであれば、少子化対策との関係について、国として、明確に説明していただきたいと考えています。
いずれにせよ、子ども医療費助成に係る国保の減額措置については、引き続き全国知事会とも連携し、国に対して全面的に廃止するよう働きかけてまいります。
3.待機児童対策
私は待機児童問題の解決に向け、保育所不足に加えて、保育士不足とその要因である保育士の劣悪な処遇改善の問題を繰り返し取り上げてきました。県内でも待機児童問題が深刻であり、今年も、保育関係者や保護者から何とかならないのか?との涙ながらの訴えが寄せられています。保育所を新設しても規定通りの保育士が確保できず、子どもの受け入れができないと言う状況があります。しかし、保育士資格者がいないのではなく、資格はあっても保育士として働かない、保育士のなり手がいないところに根本的な問題があります。保育士として働かない理由の一つが「給与の低さ」です。
国が定める保育にかかる費用である「公定価格」の保育士の賃金は、2016年の本俸基準額で19万9,920円と、10年前とほとんど変わりません。また実際の保育現場では、国の配置基準が不十分であるため、多くの自治体や保育所では、国の配置基準以上に保育士を配置しています。国の配置基準は、0歳児3対1、1~2歳児6対1、3歳児20対1、4,5歳児30対1という非常に貧しく厳しい制度であり、この基準での保育士配置ではとても勤まりません。
さらにほとんどの保育所では10時間以上の開所が一般的ですが、国の配置基準は保育時間8時間を前提としていて、長時間保育に対応したものとなっていません。新制度で国は1日11時間、年間300日の開所を求めていますが、国の配置基準以上に保育士を配置せざるをえず、基本の賃金が低い上に、基準以上の配置のため、1人当たりの賃金が国の見積もりより安くなってしまうのです。加えて、国の公定価格には昇給の財源が十分に見積もられておらず、経験加算は11年でストップされてしまい、常勤の経験者でも、手取りの月給が15万円や17万円などの実態が生じるのです。
給与の改善は緊急の課題であり、国の姿勢が問われています。小手先の改善でなく、全産業の平均との差である11 万円を埋めるための施策が急務です。
国は来年度予算案で全職員に対して2%、月6千円程度の処遇改善とともに経験者へ月額最大4万円の処遇改善をする方針ですが、確実に処遇改善につながるのか疑問に思うものです。対象者の1人1人に確実に処遇改善がなされるよう、県では独自に対策をとるとのことですが、どうやって進めていこうとしているのか知事に尋ねます。
かつて国は公立学校の教員不足を解消するために、教員の給与を6年かけて25%アップする人材確保法を制定し、確保に努めたそうです。こうした経験に学び、国の責任で職員の処遇改善に本気で取り組むことが求められています。国に対してこうした方向を求めるとともに、県レベルで処遇改善のための方策の創設を求めますが、いかがですか。知事にお尋ねいたします。
また、保育士不足を補うために、「保育士支援員」の配置をおこなう保育所に、月9万円の支援をする事業が来年度予算案にも組み込まれています。厳しい状況の続く保育現場からの要望に応えての策という事は理解しますが、無資格者の導入は処遇改善にも支障をきたすことになりかねません。小手先の手法ではなく、保育士の処遇改善と養成のための施策の強化を求めます。同時に保育士支援員の導入については時限的なものとし、その検証を注意深く行う事を求めますがいかがですか。知事の所見を問います。
(知事答弁)
次は、待機児童対策についてであります。
私は、喫緊の課題である待機児童解消に向けた対策を実施していく中で、保育士の人材確保や処遇改善は、一層強化する必要があると認識しております。
このため、国の制度改正による処遇改善については、保育士の賃金に適正に反映されるよう、今年度から本県独自に、すべての民間保育所等に対して、職員ごとの賃金改善額の報告を求めるとともに、年に1回以上実施する指導監査において、賃金台帳等でその支給状況を確認しており、今後も確実な処遇改善が行われるよう努めてまいります。
保育士の処遇改善は、国の制度で行われているところであり、県としては、財政状況が厳しい中で、独自の上乗せ補助は考えておりませんが、処遇改善のための予算が一層確保されるよう、国に対して強く要望してまいります。
また、来年度新たに実施する、保育士の業務のうち、配膳や清掃などを行う保育士支援員として「保育補助者」を配置し、働きやすい職場環境を整備する民間保育所等に補助する事業については、保育士の業務を軽減することにより、離職防止を図ることで人材を確保する効果が期待できるものと考えておりますが、今後、事業を実施していく中で、各市町や保育所等の意見を伺いながら、その効果を検証してまいります。
私といたしましては「子育て県かがわ」の実現を目指して、結婚から妊娠・出産を経て、子育てまでの切れ目ない支援を総合的に推進していく中で、待機児童対策は、特に重要かつ喫緊の課題であると認識し、各市町や関係機関と連携して、積極的に取り組んでまいります。
4.豊島棄物処理
次は豊島問題です。
1975年12月、豊島総合観光開発株式会社が、香川県知事に有害産業廃棄物処理場建設の許可申請をしてから40年を超える年月が経ちました。いよいよ廃棄物及び汚染土壌搬出の最後を迎える段階に至り、豊島住民とその運動を支え続けた皆さんの思いはいくばくかと考えると、やっとここまで来たと素直に喜びたい思いと同時に、なぜここまで大きな問題を抱えることになったのかという複雑な思いが交錯しています。
当初50万トンと言われた廃棄物の処理対象量は91万トンを超え、処理のために費やした費用はH12年度以降今年度末までの17年間で727億円となります。今後も建物の撤去や地下水浄化対策など更なる費用も必要となります。現在、追加のスピードアップ対策等が進められていますが、調停条項に基づき、期限の順守に努めることは重要です。しかし、これを最優先するばかりに事故などが起こることのないよう、安全の確保を強く求めるものです。
豊島事件が示したのは、経済至上主義による大量生産、大量消費、大量廃棄社会の限界であり、行政の無謬性、そしてこの国の形そのものでした。私たちは豊島の問題をどうとらえ、今後にどう生かしていくのかをしっかりと考える時です。同時に香川県民であっても若い皆さんはうまれる前におこった問題でもあり、問題の中味を知らない人も多くなってきました。
そこで知事にお尋ねいたします。香川県は一連の豊島事件・問題で何を学んだのか、一番大切なことは何か。また、その教訓を今後の県政にどう生かしていこうとしているのかお答えください。そしてその思いをどうやって後世に引き継いでいくのかも重ねてお尋ねいたします。
この間、豊島や直島の住民の方と率直に話し合うことを大切に、状況打開に努められていることは大事な点だと思います。しかし、この間の知事の言動で疑問に思うことがあります。それはスラグの埋め立て最終処分が調停条項に抵触するか否かという点です。住民との話し合いの中で「埋め立て回避」へと進んだことは承知しています。しかし、知事は「調停条項に反しない」との発言の撤回はしていません。
2000年に香川県と豊島住民が結んだ調停条項の前文には、技術検討委員会は、焼却・溶融方式によるのが適切との見解を示した。この焼却・溶融方式は、処理の結果生成されるスラグ、飛灰などの副成物を最終処分することなく、これを再生利用しようとするものであり、我が国が目指すべき循環型社会の21世紀に向けた展望を開くものと言える」と記されています。さらに調停条項5の(1)には「香川県は技術検討委員会の検討結果に従い、搬出した本件廃棄物等を焼却・溶融方式によって処理し、その副成物の再生利用を図る。」と記されています。知事の言う「可能な限り再生利用する」とか「全て再利用することになっていない」と言う根拠は調停条項には全く示されていません。むしろ私は「全て再利用する」としか読めないと思うのです。
知事は何をもって「調停条項に反しないと」判断したのか、また今でもご自身が発言した言葉を撤回されるお考えはないのか。知事の所見をお伺いします。
(知事答弁)
次は、豊島問題についてであります。
豊島問題から得られた教訓としては、法令を遵守するため毅然とした対応をすること、国の通知等を表面的にとらえるのではなく、現実に行われていることを直視して対応すること、現場主義を徹底すること、組織として対応すること、不法投棄の未然防止・早期発見・早期対応をすること、廃棄物の発生抑制やリサイクルに積極的に取り組むことなどが挙げられ、すべて同様に大切であると考えております。
こうした教訓を生かすため、豊島、直島の現地にて職員研修を行い、職員が豊島問題を考え、学ぶ機会を持つとともに、不法投棄の監視体制の強化を図ったほか、循環型社会の実現を目指して、いわゆる「前払い方式」を国に提案し、自動車リサイクル法の中で実現するなどの取組みを行っております。
廃棄物等の処理が終了する来年度には、豊島問題を今後の県政にどのように生かし、後世に引き継いでいくべきか、さらに検討を深めてまいりたいと考えております。
なお、粗大スラグについては、埋立処分することがないよう全力で取り組んできたところであり、これにより一時保管場所が確保でき、問題の前提がなくなりましたので、処分に関する調停条項の解釈につきまして、私の考えを申し上げるのは差し控えさせていただきたいと存じます。
(再質問)
2.医療施策について
(2)国民健康保険の都道府県単位化について
国保の都道府県単位化について再質問をいたします。
知事からは、昨日も県単位で、あたかもバラ色になるかのような答弁がありました。
しかし、3,400億円の財政支援などを進めても年間9.1万円の国保料1人あたりの保険料が2025年には11.2万円に引きあがるという内閣府の試算もあります。
保険料の軽減など期待できないのではないでしょうか。 厚労省の答弁をコピペしたような答弁ではなく、県民の命を守る立場に立つ答弁を求めて再質問を終わります。
(知事答弁)
白川議員の再質問にお答え申し上げます。
国民健康保険の都道府県単位化について、それにより、決してすべてバラ色になるようなことを私自身も思っているわけではございません。大変難しい問題でもあると思っております。
本来であれば、保険というものは、その単位が大きければ大きいほど、その効果が上がるものであります。
従って、私はこの問題が起きる前から申し上げてきたのは、本来であれば、国において一本化すべきことを検討すべきではないかと、そのようなことを申し上げてきましたが、知事会としても、厚生労働省とも協議を重ね、全体としては現在よりも良い方向に、また、このままでは破たんしかねないものを、現在よりは良い方向に持っていけるという風に考えて、現在では市町とともに、いかに良い制度として作り上げていくか努力しているところでございますので、ご理解のほどをお願い申し上げます。